本研究会について

計算機シミュレーションが学術研究、企業における研究開発・製品開発に活用されるようになって40年が経過しようとしています。文部科学省のプロジェクトで神戸に整備されたスーパーコンピュータ「京」の一般共用は2012年9月末より開始され、学術利用のみならず産業界での利用にも門戸が開かれました。失われた20年を経験した今、我が国の産業競争力強化のために計算機シミュレーションの利活用に新たなる期待が寄せられています。こうした中、「京」のような巨大システムは一つの求心力として大きな効果が期待されています。

一方、圧倒的に多くの企業の利用現場でのハードウェア環境は単体のPCやワークステーションレベルであり、大手企業でも数十から数百ノードのPCクラスタであり、数千並列の計算が可能な環境を持っているのは一握りの企業に過ぎません。「京」が提供する環境とのギャップはあまりにも大きいものがあります。その理由の一つは産業界で利用可能な商用の高並列アプリケーションが高価なことです。しかしながら、商用アプリケーションメーカ(ISV)も開発・バリデーションなどを多くの企業と同じ環境で行っており、昨今のシステムの複雑化への対応などに要する費用増大から高価にならざるを得ない状況が存在しています。また、ハードウェアの進歩は、計算機シミュレーションを発展させた功労者でもありますが、現在は1種類のアーキテクチャに淘汰されています。このアーキテクチャでは産業用アプリケーションソフトウェアの実効性能は高々数%に過ぎません。OS(Operating System)についても、計算機シミュレーションを効率的に行える環境が提供されているとは到底言えない状況にあります。

このような現状を何とか打開したいと考え、ものづくり企業、アプリケーションソフトウェアメーカ、コンピュータメーカ、研究者の異業種・異分野の連携と協働により、CAE(Computer Aided Engineering)で必要とされる計算環境について調査・研究し、CAE に適したソフトウェアとハードウェアの実現を図るとともに、周知・普及に努め、もってものづくり企業の製品競争力の強化に資することを目的としてCAE計算環境研究会を設立いたします。

本研究会は以下のような活動を行います。
(1) CAE 計算環境の調査・研究
アプリケーションを効率よく開発し、効率よく実行できる計算機は何かということについて、調査・研究を行い、その実現を目指します。

(2) オープンワークショップ、講演会などの開催
上記の調査・研究を推進し、その成果を周知普及するためオープンワークショップ、講演会などの開催を行います。また、CAE の普及促進を目指して情報提供を行います。

本研究会の趣旨に賛同する法人・個人の方の幅広いご参加をお待ちしております。

 

2014年5月30日、CAE計算環境研究会設立総会が開催され、正会員64名、賛助会員11社で、本研究会は正式に発足いたしました。

CAE計算環境研究会設立総会議案書(案)は、満場一致で了承されました。